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8
「……」
弥栄はずっと虚空を見続けていた。
手に持ったデジタルメディアプレイヤーの画面は何も映さず、
彼女の耳には何の音も届いていなかった。
「……っ」
声が漏れる。
「っふふふ……っはははっ!!」
何もない部屋。
何も見えない
何も聞こえない
それが
今の弥栄には可笑しくてたまらなかった。
「っはははは……あっはははは!!!」
病室にこだまする自分の声さえ聞こえない
弥栄の瞳には涙が浮かんでいた。

9
「先生……」
精神科の一室。
いるのは一人の医師と一人の看護師。
看護師は元々精神科の担当ではなく、内科の担当であった。
「彼女……新名弥栄のカウンセリングは、いつ始めて下さるんですか?」
医師は看護師に背を向け、机に両肘をついている。
「新名さんはもう少し観察です。カウンセリングは必ず行いますよ。」
医師の態度に看護師はやや頭に来たようだった。
 看護師はかつかつと医師に歩み寄り、強引に自分の方を向かせる。
「なら、何故いつまでもあんな隔離された病室においておくんですか!?」
「彼女には対人恐怖症の症状がある。不必要な接触を避けるための処置だ。」
「必要な接触すら、あなたはしていないじゃないですか!!回診だって、素通りどころか、前を通りすらしない。」
看護師はつかみかからん勢いだったが、医師が突然立ち上がったので一瞬身を引く。
「私は医者だ。看護師の君などよりずっと詳しい。だから私が正しいといえば正しいのだ!」
そう怒鳴りつけ、「ふん」と言って医師は部屋を出た。
 それは、看護師の態度に腹を立てたと言うよりは、図星を当てられて癇癪を起こしたように見えた。

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