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ある、大病院の中庭の片隅に
小さなクローバー畑があった。
クローバー達の殆どが三つ葉のクローバー
でも
一つだけ、葉っぱの一つ少ない、二つ葉のクローバーがあった。
その隣に一つだけ、虫にでも喰われたのか、一つの葉っぱがぼろぼろになった三つ葉のクローバーがあった。
寄り添うように生えるその2つのクローバー
他のクローバーと一緒に、
風に揺れていた。
1
今日もここ、鵠橋(くげはし)市立病院は穏やかに緩やかに時が流れていた。
僕、神城祐紀は病院の中庭の木々の下で、ぼーっと木漏れ日を眺めていた。
「……Fluisce soltanto a ed il tempo e solamente va. Sono quando o prima quali decadranno precipitando in rovina, quello che può questo piccolo io faccio?……」
呟いた言葉はイタリア語。別にイタリア人とのハーフでも、イタリアへ留学していたわけでもないが、何か人と違うことがしたくて覚えたのだが、結局長くは続かなかった。
でもたまにこうやって、拙いイタリア語で詩を呟くことがあった。
「祐紀君。今の、お得意のイタリア語よね。何て言ってたの?」
担当の看護師の声。やたらと興味を示して、楽しそうにニコニコ笑っている。
僕は何故かあまりこの人を好きになれない。でも邪険にするのもアレなので最低限程度に関わる。
「……『時はただ流れ行くのみで いつか私は朽ちてしまうだろう
その朽ち果てる前に、 この小さな私に何が出来るだろうか?』ですよ。
微妙なニュアンスとかは違うかも知れないですが。」
大体この人の行動は決まっている。
詩の意味を神妙な顔をして考えるのだが……
「うーん、よくわかんないなぁ。祐紀君の詩は。」
そういってすぐに解説を求めるのだった。
「まぁ、時の流れは止まらないで一定に動き続けるから、そのまま僕自身も流れに沿って朽ちてしまうだろうと。
それでその間に、時間とか世界から見て小さな存在である僕に、一体何ができるだろう……って結構そのまんまの詩なんですけど」
おそらく何も考えていないのだろう。結構お気楽な人なのだ。
「いやいや、そのまんまの詩だからこそ、わからないのよ。詩って、割と抽象的でしょ? だからそのまんまの詩って言うのはその意味も抽象的になる。だから、よくわかんない、抽象的っていう結論に至るのよ。」
なんか自慢げに語り始めたし。
「普通に、やりたいこととか特に無いなーって思って作った奴ですから。
まぁ、やりたいことなんかあってもどうしようもないですけど。」
少し自虐的に言う。
ここは病院で、僕は患者だ。しかも原因不明とか不治の病とか言われてるタイプの病気で。
「ほら、そういうことは言わない。病は気から。祐紀君がネガティブだと治るモノも治らないし、治らないモノはもっと治らないぞ。」
そういって彼女は僕の車いすを押し始める。
「治らないモノは治らないんだからあがいたって意味ないじゃないですか。」
僕と彼女は中庭を抜けて、病棟に入る。
「分からないじゃない? 不治の病は『今は』不治の病だけど、そうじゃなくなる日が来るかも知れないんだから。」
エレベータに乗り、4階のボタンが押される。
その看護師の言葉にイラついた。彼女は僕にあきらめるなと言っている。
僕は、既にあきらめていて、余命幾ばくをどうすごそうかと考えているのに
だから無性にイラついた。
普段はこんなにイラつくことは無かったのだが、今日は何故かすごく頭に来た。
「うるせぇよ。そうじゃなくなる日なんて、そうすぐ来ないだろう。そんな日が来る前に、僕は幾ばくの余命を終えるに決まってる!! 」
丁度エレベータのドアが開く。僕は車輪を動かす手に力を込める。
車いすを走らせて、看護師の手を振り切る。
僕の病室がある4階の中を思いっきり走った。
大病院だけあって広く長い廊下を走り抜ける。
そして、曲がり角に突き当たるまで、曲がれないことに気付かなかった。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
その時、たまたま開いた一つの病室の中に、僕は突っ込んだのだった。
---to be continued---
ある、大病院の中庭の片隅に
小さなクローバー畑があった。
クローバー達の殆どが三つ葉のクローバー
でも
一つだけ、葉っぱの一つ少ない、二つ葉のクローバーがあった。
その隣に一つだけ、虫にでも喰われたのか、一つの葉っぱがぼろぼろになった三つ葉のクローバーがあった。
寄り添うように生えるその2つのクローバー
他のクローバーと一緒に、
風に揺れていた。
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今日もここ、鵠橋(くげはし)市立病院は穏やかに緩やかに時が流れていた。
僕、神城祐紀は病院の中庭の木々の下で、ぼーっと木漏れ日を眺めていた。
「……Fluisce soltanto a ed il tempo e solamente va. Sono quando o prima quali decadranno precipitando in rovina, quello che può questo piccolo io faccio?……」
呟いた言葉はイタリア語。別にイタリア人とのハーフでも、イタリアへ留学していたわけでもないが、何か人と違うことがしたくて覚えたのだが、結局長くは続かなかった。
でもたまにこうやって、拙いイタリア語で詩を呟くことがあった。
「祐紀君。今の、お得意のイタリア語よね。何て言ってたの?」
担当の看護師の声。やたらと興味を示して、楽しそうにニコニコ笑っている。
僕は何故かあまりこの人を好きになれない。でも邪険にするのもアレなので最低限程度に関わる。
「……『時はただ流れ行くのみで いつか私は朽ちてしまうだろう
その朽ち果てる前に、 この小さな私に何が出来るだろうか?』ですよ。
微妙なニュアンスとかは違うかも知れないですが。」
大体この人の行動は決まっている。
詩の意味を神妙な顔をして考えるのだが……
「うーん、よくわかんないなぁ。祐紀君の詩は。」
そういってすぐに解説を求めるのだった。
「まぁ、時の流れは止まらないで一定に動き続けるから、そのまま僕自身も流れに沿って朽ちてしまうだろうと。
それでその間に、時間とか世界から見て小さな存在である僕に、一体何ができるだろう……って結構そのまんまの詩なんですけど」
おそらく何も考えていないのだろう。結構お気楽な人なのだ。
「いやいや、そのまんまの詩だからこそ、わからないのよ。詩って、割と抽象的でしょ? だからそのまんまの詩って言うのはその意味も抽象的になる。だから、よくわかんない、抽象的っていう結論に至るのよ。」
なんか自慢げに語り始めたし。
「普通に、やりたいこととか特に無いなーって思って作った奴ですから。
まぁ、やりたいことなんかあってもどうしようもないですけど。」
少し自虐的に言う。
ここは病院で、僕は患者だ。しかも原因不明とか不治の病とか言われてるタイプの病気で。
「ほら、そういうことは言わない。病は気から。祐紀君がネガティブだと治るモノも治らないし、治らないモノはもっと治らないぞ。」
そういって彼女は僕の車いすを押し始める。
「治らないモノは治らないんだからあがいたって意味ないじゃないですか。」
僕と彼女は中庭を抜けて、病棟に入る。
「分からないじゃない? 不治の病は『今は』不治の病だけど、そうじゃなくなる日が来るかも知れないんだから。」
エレベータに乗り、4階のボタンが押される。
その看護師の言葉にイラついた。彼女は僕にあきらめるなと言っている。
僕は、既にあきらめていて、余命幾ばくをどうすごそうかと考えているのに
だから無性にイラついた。
普段はこんなにイラつくことは無かったのだが、今日は何故かすごく頭に来た。
「うるせぇよ。そうじゃなくなる日なんて、そうすぐ来ないだろう。そんな日が来る前に、僕は幾ばくの余命を終えるに決まってる!! 」
丁度エレベータのドアが開く。僕は車輪を動かす手に力を込める。
車いすを走らせて、看護師の手を振り切る。
僕の病室がある4階の中を思いっきり走った。
大病院だけあって広く長い廊下を走り抜ける。
そして、曲がり角に突き当たるまで、曲がれないことに気付かなかった。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
その時、たまたま開いた一つの病室の中に、僕は突っ込んだのだった。
---to be continued---
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