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10
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
荒い息をつき、祐紀は車いすを止める。
目の前には、病院内でも異質な雰囲気を出す棟、精神科棟。
そいつを睨み付け、祐紀は中に入っていく。
中にはいると、受付があって、まるでそこだけ別の病院のようになっていた。
「あなたは、本棟の患者さん? どうしたんですか、こんなところで」
受付の看護師が声を掛ける。祐紀は慎重に言葉を選ぶように言った。
「面会……新名弥栄と面会したいんです、けど」
「新名弥栄さんね、ちょっと待ってて……」
そう言って看護師は奥へ引っ込んでしまった。
恐らく入院患者リストであろうファイルをめくるよう音が響き始める。
その間に祐紀は病院内を見渡す。
何故か薄暗い室内。他の場所とはあきらかに違う空気、匂い。
そこにいるだけで腸が煮えくり返りそうな気配。
何もせずにいるだけで、狂ってしまいそうな気がした。
「お待たせ。」
その声に祐紀は我に返った。調べ終わった看護師が、受付に戻っていた。
「新名弥栄さん。一番奥の113室ね。真っ直ぐ行って、突き当たりだから、すぐに分かるわ」
そう言われ、看護師の行ったとおりに歩き始める。
薄暗い廊下はいよいよ暗くなり、部屋の前についたときには
部屋番号を読むのも難しい程の暗さになっていた。
扉を開ける。
「弥栄……」
11
私が私じゃなくなっていく。
私を手放そうとする。
私はもう誰も信じられない世界に居たくなかった。
だからもう、手放そうと思った。
さよなら―――「私」に最後の別れを告げようとした
その時だった。
「弥栄……」
その時、思い出した。
私にも信じれるもの。
光を失ってから出会った、顔も分からない、彼のことを。
私の信じられるモノ。
たって一つ
ねぇ―――
「……ぁ……」
声が出ない
言葉が分からない
どうしたら良いんだろう。
また忘れない内に声に出して、
伝えなくちゃ行けないのに。
なんで……
私と「私」の間はこんなにも
遠いのだろう……
12
祐紀が部屋に入ったとき、弥栄はベッドに横たわっていた。
「弥栄……」
祐紀が駆け寄り、声を掛ける。
しかし、彼女の表情は恍惚としたものを浮かべ、
口から溢れた唾液がそのまま口元をつたっていた。
弥栄の口は不自然に揺れ、
ただ
「……あ……」
と言っただけだった。
弥栄は、もう―――壊れかけていた。
「弥栄……」
祐紀は深く絶望した。
幾度名前を呼ぼうとも、
弥栄はまともな答えを浮かべられなかった。
ただ恍惚の表情で意味のない言葉を呟く。時々大笑い、10分ほどで収まるが、その後しばらく祐紀は弥栄の元に通い詰めたが、弥栄の状態は一向によくはならなかった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
荒い息をつき、祐紀は車いすを止める。
目の前には、病院内でも異質な雰囲気を出す棟、精神科棟。
そいつを睨み付け、祐紀は中に入っていく。
中にはいると、受付があって、まるでそこだけ別の病院のようになっていた。
「あなたは、本棟の患者さん? どうしたんですか、こんなところで」
受付の看護師が声を掛ける。祐紀は慎重に言葉を選ぶように言った。
「面会……新名弥栄と面会したいんです、けど」
「新名弥栄さんね、ちょっと待ってて……」
そう言って看護師は奥へ引っ込んでしまった。
恐らく入院患者リストであろうファイルをめくるよう音が響き始める。
その間に祐紀は病院内を見渡す。
何故か薄暗い室内。他の場所とはあきらかに違う空気、匂い。
そこにいるだけで腸が煮えくり返りそうな気配。
何もせずにいるだけで、狂ってしまいそうな気がした。
「お待たせ。」
その声に祐紀は我に返った。調べ終わった看護師が、受付に戻っていた。
「新名弥栄さん。一番奥の113室ね。真っ直ぐ行って、突き当たりだから、すぐに分かるわ」
そう言われ、看護師の行ったとおりに歩き始める。
薄暗い廊下はいよいよ暗くなり、部屋の前についたときには
部屋番号を読むのも難しい程の暗さになっていた。
扉を開ける。
「弥栄……」
11
私が私じゃなくなっていく。
私を手放そうとする。
私はもう誰も信じられない世界に居たくなかった。
だからもう、手放そうと思った。
さよなら―――「私」に最後の別れを告げようとした
その時だった。
「弥栄……」
その時、思い出した。
私にも信じれるもの。
光を失ってから出会った、顔も分からない、彼のことを。
私の信じられるモノ。
たって一つ
ねぇ―――
「……ぁ……」
声が出ない
言葉が分からない
どうしたら良いんだろう。
また忘れない内に声に出して、
伝えなくちゃ行けないのに。
なんで……
私と「私」の間はこんなにも
遠いのだろう……
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祐紀が部屋に入ったとき、弥栄はベッドに横たわっていた。
「弥栄……」
祐紀が駆け寄り、声を掛ける。
しかし、彼女の表情は恍惚としたものを浮かべ、
口から溢れた唾液がそのまま口元をつたっていた。
弥栄の口は不自然に揺れ、
ただ
「……あ……」
と言っただけだった。
弥栄は、もう―――壊れかけていた。
「弥栄……」
祐紀は深く絶望した。
幾度名前を呼ぼうとも、
弥栄はまともな答えを浮かべられなかった。
ただ恍惚の表情で意味のない言葉を呟く。時々大笑い、10分ほどで収まるが、その後しばらく祐紀は弥栄の元に通い詰めたが、弥栄の状態は一向によくはならなかった。
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