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2
朝。
志藤浩太の朝は早い。
嫌いな母が帰ってこない内に家を出るためだ。
まだ肌寒い時間に、浩太は家を出る。
 浩太の家から学校までは徒歩で15分程度と近い。
故に真っ直ぐに学校へ向かえばあまりにも早く学校に着いてしまう。
あまり早すぎても学校の門が開いてないこともあるので真っ直ぐに学校へは向かわない。
家を出てすぐの角を学校とは反対側に曲がる。そのままなだらかな丘を登ったところに小さな教会があった。
 そこに向かうのが志藤の日課だった。
教会の扉を開き、聖堂へ。そこにはもはや顔なじみになった小太りの神父の姿があった。
「やぁ、志藤君。毎日毎日ご苦労だね。」
神父は慈愛に満ちた微笑をその顔に貼り付け、壇上に立っている。
「別に、好きでやっていることですから」
志藤は素っ気無く答える。
そして適当な長椅子に座るとカバンから聖書を取り出し、パラパラとめくり始めた。
 志藤の聖書は使い古されているようでボロボロになっていた。
もう何度も繰り返し読んだ聖書だが、何もしないよりはずっとマシだと志藤は思っていた。
しかし、その内容も最早暗唱できるほどに読み込んでしまい、それを読む行為は何もしないことど同意義に近づいていた。
志藤は聖書を閉じ、カバンにしまう。そして聖堂に備え付けられているパイプオルガンに向かう。
「触っていいですか?」
志藤は神父の了解を得るとゆっくりと、滑らかに旋律を紡ぎだす。
志藤の鍵盤裁きは決して上手くはない。しかし、年月をかけないと達さない域の実力であった。
神父と志藤。たった二人だけの聖堂に荘厳なパイプオルガンから旋律が駆け巡る。
 一通り弾きおわるとパチパチと神父から拍手が贈られた。
「随分上手になりましたね。最初は触ったことも無かったのでしょう? 」
そう言って志藤の元へ近寄り、楽譜を覗き込む。表題は『キリエエレイソン』。ミサの一つである
「まぁ、折角お借りしているんだから上手な方がいいかなと思っただけです。まだまだ自信を持って弾けるレベルじゃないですけどね」
志藤は顔色一つ変えず、答えた。
それから何曲か演奏している内に通学に丁度いい時間になっていた。
志藤は神父に一声かけて教会をあとにした。

教会を出て学校へと向かう。クラスメートの何人かと出会うが声は掛けない。
高校に通い始めて何ヶ月かになるが、高校の中に志藤にとって友達と呼べる存在は居なかった。
あまり人付き合いが得意では無かったせいもあるが、あまり喋らない志藤はクラスにうまく馴染めていなかった。自身の席に腰を落ち着けるとボーッと窓の外を見る。穏やかな太陽が輝き、今日は暖かくなることを伝えていた。
志藤に取って何の張り合いも潤いも無い淡白な時間が始まる。
教師が入れ替わり立ち替わり教室を出入りし、その度に教室内はざわついたり静かになったりした。
 昼は学食に行く生徒が多く、教室内は静かになる。志藤は昼を食べない。もう何ヶ月も食べていないがそれで不都合を感じたことは無かった。
午後の授業が始まり、また教師が出たり入ったり。最後に担任とついた教師が出てきて、今日の授業の終わりを告げた。
 教室内に広がる喧騒はやがて、30分もしない内に静かになる。

そしてまた暫く退屈な時間を過ごし、時間を見計らって帰る。その日も志藤はそのつもりで自身の席に座っていた。

---to be continued---

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