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前話はコチラ
6
次の日曜日、早朝。志藤は教会に居た。
毎日繰り返し訪れ、毎日そこで聖書を読み、毎日パイプオルガンを触っていた。
しかし、今日の志藤はその毎日を繰り返さなかった。
聖書の代わりにある冊子を取り出す。先日蔵野に渡された『部活一覧』のタイトルがついた冊子だった。
志藤はぱらぱらとページをめくり、運動系のページを飛ばす。そして、冊子の2/3程を占める文化系の部活に目を通し始めた。
「部活を始めるんですか?」
ふと教会の神父が志藤に声をかけた。あの慈愛に満ちた顔のまま、彼の読んでいる冊子に目を落としていた。
「いや、どうでしょうね。やりたいことがあるわけでもないですから。」
志藤は振り向かずに答えた。かと言って冊子を読みふけっているわけではないようだった。
「志藤くんは若いんですから、色々やってみたらいいですよ。ホラ、ピアノとか弾いてみたらどうでしょう? 毎日ココでパイプオルガンを弾いてるのですし、少しは興味が持てそうではありませんか?」
神父はさも名案であるかのように、たまたま開いていたページにあった。ピアノアンサンブル部なんてものを指さす。
しかし、志藤は相変わらずの反応で
「いや、ここで弾かせてもらってるだけで十分ですので」
といってその意見を一蹴してしまった。
結局普段聖書を読むように、まるでその冊子が白紙であったかのように読み終えてしまうと、志藤はパイプオルガンの方に足を運ぶ。
教会という特性上、パイプオルガンにはミサ曲の楽譜が設置されているが、神父の取り計らいにより、様々な楽譜が準備されていた。
志藤は適当に楽譜を漁ると、彼が最もよく弾くその曲を取り出した。
『主よ、人の望みの喜びよ』ドイツの作曲家バッハの作った最も有名な曲の一つ。
パイプオルガンがそのパイプを震わせ、まるで教会全体を包むようにその旋律を紡いでいく。
荘厳に音を響かせ、聞く者の心に安らぎを与えるように。志藤のしなやかな指使いが、よく整備されたオルガンが、時に透き通るように、時に染み入るように音を鳴らし、曲を作り上げていった。
やがて旋律が終わりを告げる、まるで名残惜しむような余韻が教会の中を包み、僅かな時間をかけて消えた。
ぱちぱちと一人分の拍手の音が鳴る。
志藤が振り向く。
そこにはあの慈愛に満ちた顔の神父がいるはずだった。
しかし違った。
そこにいたのは少女。
志藤と同じ歳の頃の少女がいた。
少女と目が合う。
少女はゆっくりと志藤にほほえみかけた。
ちょっとした用事で席を外していた神父が戻ってきたときも、志藤は呆然としていた。
パイプオルガンの倚子に座り、振り向いたままでまるでネジの切れたおもちゃのように、志藤は動かなかった。
「志藤君、どうかしたのかな。」
神父の声に志藤が我に返る。
あたりを見回したが、先程の少女の姿は見あたらなかった。
「あれ……」
志藤は眼をこすったり瞬きをしたりして、もう一度教会内を見回すが、少女の姿は見えない。
「あの、さっき女の子がいませんでしたか? 僕と同じくらいの年頃の……」
不思議そうに首をかしげながら神父に問う
「私は所用で席を外していましたから分かりませんが、私が戻ってきたときには志藤君以外は誰もいなかったと思いますよ」
神父も首をかしげてしまう。どうやら心当たりも無いようだった。
もう一度その少女が来るかもしれないと思い、志藤はその日一日教会にいたが、結局その少女が現れることは無かった。
---to be continued---
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次の日曜日、早朝。志藤は教会に居た。
毎日繰り返し訪れ、毎日そこで聖書を読み、毎日パイプオルガンを触っていた。
しかし、今日の志藤はその毎日を繰り返さなかった。
聖書の代わりにある冊子を取り出す。先日蔵野に渡された『部活一覧』のタイトルがついた冊子だった。
志藤はぱらぱらとページをめくり、運動系のページを飛ばす。そして、冊子の2/3程を占める文化系の部活に目を通し始めた。
「部活を始めるんですか?」
ふと教会の神父が志藤に声をかけた。あの慈愛に満ちた顔のまま、彼の読んでいる冊子に目を落としていた。
「いや、どうでしょうね。やりたいことがあるわけでもないですから。」
志藤は振り向かずに答えた。かと言って冊子を読みふけっているわけではないようだった。
「志藤くんは若いんですから、色々やってみたらいいですよ。ホラ、ピアノとか弾いてみたらどうでしょう? 毎日ココでパイプオルガンを弾いてるのですし、少しは興味が持てそうではありませんか?」
神父はさも名案であるかのように、たまたま開いていたページにあった。ピアノアンサンブル部なんてものを指さす。
しかし、志藤は相変わらずの反応で
「いや、ここで弾かせてもらってるだけで十分ですので」
といってその意見を一蹴してしまった。
結局普段聖書を読むように、まるでその冊子が白紙であったかのように読み終えてしまうと、志藤はパイプオルガンの方に足を運ぶ。
教会という特性上、パイプオルガンにはミサ曲の楽譜が設置されているが、神父の取り計らいにより、様々な楽譜が準備されていた。
志藤は適当に楽譜を漁ると、彼が最もよく弾くその曲を取り出した。
『主よ、人の望みの喜びよ』ドイツの作曲家バッハの作った最も有名な曲の一つ。
パイプオルガンがそのパイプを震わせ、まるで教会全体を包むようにその旋律を紡いでいく。
荘厳に音を響かせ、聞く者の心に安らぎを与えるように。志藤のしなやかな指使いが、よく整備されたオルガンが、時に透き通るように、時に染み入るように音を鳴らし、曲を作り上げていった。
やがて旋律が終わりを告げる、まるで名残惜しむような余韻が教会の中を包み、僅かな時間をかけて消えた。
ぱちぱちと一人分の拍手の音が鳴る。
志藤が振り向く。
そこにはあの慈愛に満ちた顔の神父がいるはずだった。
しかし違った。
そこにいたのは少女。
志藤と同じ歳の頃の少女がいた。
少女と目が合う。
少女はゆっくりと志藤にほほえみかけた。
ちょっとした用事で席を外していた神父が戻ってきたときも、志藤は呆然としていた。
パイプオルガンの倚子に座り、振り向いたままでまるでネジの切れたおもちゃのように、志藤は動かなかった。
「志藤君、どうかしたのかな。」
神父の声に志藤が我に返る。
あたりを見回したが、先程の少女の姿は見あたらなかった。
「あれ……」
志藤は眼をこすったり瞬きをしたりして、もう一度教会内を見回すが、少女の姿は見えない。
「あの、さっき女の子がいませんでしたか? 僕と同じくらいの年頃の……」
不思議そうに首をかしげながら神父に問う
「私は所用で席を外していましたから分かりませんが、私が戻ってきたときには志藤君以外は誰もいなかったと思いますよ」
神父も首をかしげてしまう。どうやら心当たりも無いようだった。
もう一度その少女が来るかもしれないと思い、志藤はその日一日教会にいたが、結局その少女が現れることは無かった。
---to be continued---
連載が入り乱れて読みにくいわ、間が空いて昔の引っ張り出すのがめんどいはとか
常々思ってたりしますが、要望とか出てるわけじゃないのでスルーしてました。サーセン
読む手を作るのはまず環境から、ということで
全話リンクを加えつつ、今回から前話へのリンクを貼り始めました。
相変わらず更新ペースはマイペース極まりないですが
なんていうか少しは回ってるカウンターを信じてもうちょっとがんばってみたいとは思います。
R.U.N.E 二人だけのクラブ 5
R.U.N.E 二人だけのクラブ 4
R.U.N.E 二人だけのクラブ 3
R.U.N.E 二人だけのクラブ 2
R.U.N.E 二人だけのクラブ 1
常々思ってたりしますが、要望とか出てるわけじゃないのでスルーしてました。サーセン
読む手を作るのはまず環境から、ということで
全話リンクを加えつつ、今回から前話へのリンクを貼り始めました。
相変わらず更新ペースはマイペース極まりないですが
なんていうか少しは回ってるカウンターを信じてもうちょっとがんばってみたいとは思います。
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