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 志藤が教室を去った頃。教員室では志藤の担任である薄井は『生徒メモ』と書かれたメモ帳をぱらぱらとめくっていた。
そのページをめくる指が不意に止まる。
 『志藤浩太はあまり人と話さない。よく言えばクール、悪く言えば根暗ともとれる、そんな生徒だった。
父親がおらずシングルマザーで、その母を避けているせいか、人と関わろうとしない。もしかしたら関わり方を知らないのでは無いだろうか。』

そんなことが走り書きで書かれたページだった。
真面目な性格の薄井は自身の生徒一人一人の気になったことをこの『生徒メモ』に書き残していた。
『本人は気にしていないように見えるがクラスでも孤立しているようだ』
そのページにさらに書き込む。志藤浩太の欄はそのような走り書きでいっぱいになっていた。
それを見ていて薄井は「どうしたもんかなぁ」等と、ひとりごちていたのだった。
すると教員室の中にコンコンと丁寧なノック音が響く

「失礼します。」

そう言って教員室に入ってきたのは蔵野だった。委員長として窓の施錠や掃除等のチェックを任せていたので、それの終了報告であろうと薄井は思った。実際その通りであった。
「蔵野、今日は随分来るのが遅かったけど、何かあったのか? 」
薄井はこのためにこの時間まで残っていた。教員会議の無い曜日のため、教員室にはもう他には誰も残っていなかった。
「えっと、志藤君と少しお話してしまって。」
実際には蔵野は間違ったことは言ってないと言える。
蔵野が一方的に話しかけていたとは言え、最終的には志藤が根を上げ、会話とも言える状態が発生したからだ。
だが薄井は志藤の性格や学校生活などから、蔵野が嘘を吐いていると思った。しかし
(蔵野だって、何か言えない事情があるのだろう)
そう思い、それ以上言及することなく、蔵野から学級ノートを受け取る。
中身をぱらぱらと簡単に目を通し、蔵野を「お疲れ様」と言って帰した。
 そして薄井自身も帰宅の支度をして席を立つ。
すると1階にあるこの教員室の窓の向こうを、蔵野と志藤が並んで歩いている姿が見えた。
(あながち、さっきの蔵野の言い訳は嘘じゃなかったのかな)
そう思わざるを得なかった。
 薄井は教員室の鍵を取り、施錠した後、それを事務室に預ける。
そうしている間に、蔵野と志藤は、もう見えなくなっていた。

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